#033-0002「滑らかな夢」2009年03月23日 18時32分45秒

 滑らかな夢の続きに、寄せる想いの残照、煌きながらも蜃気楼のごとく、零れる涙を遠くした。
 非継続とは夢の跡ではなく、かつ死への入り口でもない、死の只中の無限回廊であるのか。
 未生なる想いの実体が花咲かせ、乱れる香りを放散させて、なお満ちることがない。時空の泡沫が永遠の波を飾り立て、行方の安堵をささやかな贈りものにしようとしていた。
 還りようもない、素肌の艶かしさに溜息を漏らして、一瞬の降下を企てたのだった。

  うつらには
  きらめくゆめの
  なびくいろ
  ひとときたびの
  かえりみちけし

 悠久に見えた一瞬、或いは虚ろな夢の鮮やかな肌触り。
 頂点なる無限への果てしない躍動のうねり。
 追いかけ逃げて、なおも納まることを拒否する意志。

 通過する夢見の一筋に全てを忘れて、死からの再生である、濃密な世界の密着する感情を認めて、倒立した死のある世界へと向かう。
 喜びと悲しみが相乗りして、儚い世界の指標と目したが、それは必然の死を招くことを知らなかった。

 夢が死なのか、死が夢なのか。想いの種子が宇宙を舞い、体の組織は星の纏いを繕う。

 苦しみという大いなる冒険。楽しみという大いなる危険。慈しみに置き忘れた愛を夢見て業なる技の永劫を尽き果てる。
 もし悲しみという情感が深く落ち込むならば、底からの希望を汲むことが出来る野望は、閉じた円環の始めなき、終わりなき撞着なのだろう。
 光の鞘が勢いを増し、会釈をするように見えた。突然なる変身が永遠への変化に延べて、煌きと暗闇の紋様が織り成す、原子と宇宙の相似に顕われた。

 思い込みの原理が研ぎ解され、念のしこりがエネルギーの波に高潮する。

 もはや言葉というより、形ない結晶という光のやり取りに振幅と波長を揃え始めて、宇宙の爆発に恍惚する。
 再びに際する喜びは死の区切りを越え、上昇なる魂の木霊を共振して、一なることの、他なる自を微笑で迎える。

 弔いに涙するいのちの大いなる亡失。それは肌に寄せる微風になっていった。

(文字数:800)
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コメント

_ ウラジーミル・コマ子 ― 2009年03月24日 13時22分05秒

ひとつひとつの言葉がなにを意味していたり指し示していたりというのは明確につかめないにもかかわらず読んでいて揺られます。舟に揺られるように言葉に揺られるとでもいいますか。さいごに来て微風の感覚が肌にかんじられてもなんの不思議もかんじませんでした。

_ 木の目 ― 2009年03月26日 06時16分19秒

不思議なことに、かんべむさしさんの、宇宙の真理を悟ってしまった男のショートショートを思い出しました。

_ 滑らかな夢より ― 2009年03月26日 14時48分04秒

 生きるとは愛です。でも真実は生きるとは夢です。ではそれを分ける死とは何でしょうか。

ウラジーミル・コマ子さま
 コメントありがとうございます。
 意味する言葉の波打ち際に揺らぐいのちの現場は、果てしない或いは刹那の夢かもしれません。

木の目さま
 コメントありがとうございます。
 或いは司る夢の合間に、私でない私が揺れて、解れない些事を大いなる愛で包んでいるのかもしれないと、妄念するのです。

_ ukihaji-12 ― 2009年03月26日 20時12分35秒

何事も詩的に解釈、万事の解決策を見出す情緒豊かなプラス志向のお方かと、推察されます。とても私の及ぶ所では有りません脱帽です。

_ ヴァッキーノ ― 2009年03月28日 00時07分05秒

独自の文体を続けるというのは、
大変な苦労だろうと思います。
特に、崇高な高鳴りを響かせる文章は。
「死」というあまりにも直接的なお題だったので
少し、戸惑ったんじゃないですか?
相反するもの、「死」と背中合わせのものは
そうはありませんから。
でも、これだけの力作!
すごいですねえ。

_ おっちー ― 2009年03月29日 00時42分04秒

 きっとこの文章を書かれるときには、頭の中で歌を歌うように自然に紡ぎだされるものなのではないかと推察するのですが、そういった書き方をする時には、文章の意味内容が薄くなってしまうことがある。それは僕の経験からくる、文章書きの陥りやすい罠だと思います。
 けれどもこの作品の作者さんのすごいところは、これだけ、読んだ時の「音」としても、活字を目で見た感じとしても、美しいものを書かれているのに、文章の一節一節で語られているものが深く、拡がるイメージが広いことです。
 これは長い作家さんとしての経験の積み重ね、ある意味の「技術」の裏打ちがないと実現できないことでしょう。
 僕にはとても到達することのできない境地を見た気がして、畏敬の念を抱きます。

_ つとむュー ― 2009年03月30日 22時18分57秒

>もはや言葉というより、形ない結晶という光のやり取りに振幅と波長を揃え始めて、宇宙の爆発に恍惚する

この間、「ねこ耳少女の量子論」というマンガを買ったんですよ(あれれ、どこかで見たようなコメントだなあ・・・笑)。やはり、霊の存在というものは、量子論を使わないと証明できそうもありませんね。この作品を読んで、そう確信しました。はたして光は波なのか粒子なのか、はたまた重さの無い粒子とはいったい何なのか・・・?それは、”霊”の存在を証明することと変らないような気がします。
ところでこのマンガ、なかなか萌えます。お勧めです(笑)

_ manicure ― 2017年04月11日 19時38分59秒

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