#028-0007「The Death of LoveWorld」2008年09月06日 12時05分46秒

丸い空が見える
ここは木々に囲まれた 森の空地

時々鼻を突く 湿った植物の臭い 土の臭い 虫の臭い 動物達の臭い
気温が高いから それらが鼻の周りにまとわり付くように感じる

風の音 木々のざわめき 遠くから鳥の声が聞こえる
ここが私の生まれた場所
私はずっと ここで生きてゆくはずだった


私はある日 人間の若い男と一緒に森を抜け出した
私に親はいなかった 仲間からは嫌われていた
男の誘いを断る理由はなかった
その頃から私は 恋という感情が妖精である私にもあるならば
それに心を奪われていたのかも知れない

その直後 私に仲間が出来た 全て人間だ
5人皆が冒険者であり 職人だった
彼らは 男の仲間だった
私を仲間だと 皆が言った
初めてそれを面と向かって言われた時 どうにもならない感情が身体からあふれて
顔がカッと熱くなり 目から水がどうどうと零れた
水が 鼻の奥からも流れた
泣くな と言われた
意味がわからなかった
その日 私がいつの間にか眠りにつくまで その水はどうしようもなく流れ続けた
翌朝 私は男の腕の中で太陽の光を見た

そのあと
私は男と仲間を守るために戦い続けた
私の出来る限りの能力を使い 闘った
ある時は盗賊と またある時は竜と
それは常に死と隣り合わせの厳かな儀式のように思えた
けれど それは同時に私にとって 身体 心 が軽くなる この男
そしてこの仲間と同じ方を向いて闘う日々だった
またそれは 私を巣食う森での過去の記憶を次第に忘れさせてくれた

そして私たちはいつしか
人間界で英雄と呼ばれるものになっていた
仲間で夜 酒を酌み交わし 食事を共にする
笑顔が絶えなかった

「仕事」もどんどん大掛かりなものになっていったが
私たちにはそれを乗り越えるチカラと根性があった
あ…私今「根性」なんて言葉使ってる…こんなことになると思わなかった
おっかしいの

けれどその日は 思ったより早くきたんだ

なぜ私は妖精で 彼は人なのだろう
妖精は、死なない。
人は亡くなる。朽ち果てる。


私は今 あんなに嫌だった森にいる
見上げると 丸い空が見える
(文字数:800)
名前:

コメント

_ ヴァッキーノ ― 2008年09月07日 19時57分05秒

ファンタジーに果敢に挑戦するのは、すごいことですね。
ボクの子供は、ファンタジーが好きで、分厚いやつをペロリと読んでしまうんですが、ボクにはなんだかどれも同じような感じがして(しかも長い!)、どうも馴染めません。
でも、このくらいの長さなら大丈夫です。
ファンタジーっておもしろいですね。

_ デスラブ作者 ― 2008年09月17日 23時45分00秒

▼ヴァッキーノさんへ

 コメントありがとうございます。
 ファンタジー大好きなんですよー。
 赤川次郎と、宗田理と、星新一読み始めた頃から、ファンタジー読んでましたから。でもヴァッキーノさんのお子さんみたいに海外のではなく、国産のファンタジーですが…
 ファンタジー長いですよね。登場人物の相関図書いただけで何頁も使ってしまいそうで、読み手の記憶力が問われますよね。
 でもこのシリーズは、最低でも3人覚えておけば、なんとかなりますから。

>ファンタジーっておもしろいですね。

 とか言いつつ、ヴァッキーノさんも書かれてますよね、ファンタジーは。
 僕のこの作品に対して使っている『ファンタジー』というのは、トールキンの「指輪物語」などを源流とする流れの中にある、テーブル・トーク・ロール・プレイングゲーム「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の世界観を基にした、いわゆる「剣と魔法の世界」での物語、ということでしょう。
 そのへんの理解も含めつつ、『ファンタジー』という言葉を使っていただいてありがとうございます。
 ヴァッキーノさん作の、広い意味でのファンタジー作品も期待していますよ!

_ ウラジーミル・コマ子 ― 2008年09月20日 13時41分31秒

ぼくもファンタジーはあまり読んだことがないので、こういう作品はある意味勉強になります。
生死ある人間だけが登場するリアリズムの物語り同様のせつなさが感じられるのは、フィクションの力なのだと思います。
死なない妖精には涙がない、というのがとくに印象にのこりました。

_ なぎさひふみ ― 2008年09月20日 14時18分21秒

 裏読みが出来るのはファンタジーのすごさ、奥深さを物語り、結論なきその完結が、時空の重層さを引き立たせる。

 私なら「根性」は「愛」にすると思う。

_ デスラブ作者 ― 2008年09月20日 23時48分35秒

みなさんコメントありがとうございます。

▼ウラジーミル・コマ子さんへ

 元々ある世界観を使って物語を創るので、ある意味ちょっと「手抜き」の作品であるのかな、と今思いました。
 エルフには感情の起伏が薄い、というイメージがありました。「死なない妖精には涙がない」というのは美しい読まれ方ですね。嬉しいです。

_ デスラブ作者 ― 2008年09月20日 23時55分40秒

▼なぎさひふみさんへ

 そのままキャッチコピーにしたいような一文を寄せていただき、ありがとうございます。

>私なら「根性」は「愛」にすると思う。

 なるほど、それは美しいです。
 でも、好み、というか、作者のカラーの問題なのでしょうね、ちょっと茶目っ気を出させて微笑みを獲得したい僕という作者と、壮大な作品観・美しさを極めるなぎささんという作者…両者の「色」が端に出た感じで、興味深いです。

_ でんち ― 2008年09月21日 11時02分27秒

戦いが「仕事」という言葉になった。
なんだか現実世界を感じ、不思議な感覚に、仕事は戦いなのかしらん?なんて。

おっかしいの、ってたくましい妖精さんがつぶやいている姿は面白い。

_ デスラブ作者 ― 2008年09月21日 23時30分20秒

コメントありがとうございます。

▼でんちさんへ

 仕事は戦いです。自分との、仕事との、競争相手との。
 冒険者も「職人」ですから、なにしろ。言葉も使い方次第で色味を持たせられます。
 面白いとおっしゃっていただけてとても嬉しいです。このへんの流れでは、そこはかとない趣きが感じられればよろしですから。

_ つとむュー ― 2008年09月22日 22時03分02秒

>妖精は、死なない。
ということは、この「私」は、今この時点も、五人のサラリーマン戦士と戦い続けていることでしょう。妖精の力があれば、どんなプレゼンでも勝てるような気がするのは不思議です。
都会で生きる妖精の物語も、読んでみたいなあと思いました。

_ おっちー ― 2008年09月22日 23時30分22秒

コメントありがとうございます。

▼つとむューさんへ

>今この時点も、五人のサラリーマン戦士と戦い続けていることでしょう。

 微妙な時期ですね。"The ReBirth of LoveWorld"で語られている通り、カルロスが亡くなって少しした時点で私――リリィは「仲間」との関係を絶っています。
 妖精は、ある意味人間よりも神に似ている存在ですから、彼ら彼女らを味方につけたら、それはそれは頼もしいことでしょうね。

>都会で生きる妖精の物語も

 いっそのこと、これシリーズにしちゃいましょうか?(笑)

_ あっ ― 2008年09月22日 23時33分30秒

 ↑しまったー
 もうわかりきってるけどさあ
 やってしまうと口惜しいー
 っっっ!!

Written by おっちー

_ 儚い預言者 ― 2008年09月23日 09時19分11秒

 あっひー、おっちー落ちた、おっひー。
 上昇はいつも底の底。竜のはらわたにある。
 そしていつもあなたは知っていながら知らない。
 はたまた知らないことの探求は自分自身と夢の壮大な宇宙を奏でる。

_ おっひー ― 2008年09月23日 21時42分57秒

▼儚い預言者さまへ

 ええ、私はおっひーですよう。もうなんとでも言って。
 そしてこんなことにでも預言者さまは深遠な言葉を残される。
 知的探究心、追いかけっこが面白いんだいっ!

_ マロ ― 2008年09月23日 23時40分56秒

妖精というと、無邪気でいたずら好きというイメージが強いですが、この作中の妖精はとてもウエットで、人間よりも人間くさいというか、そういう存在として描かれているのが興味深いです。
最後は、諦観とある種の絶望。その深さが「世界の終わり」なんでしょうか。

_ ぎんなん ― 2008年09月24日 01時24分22秒

壮大なストーリーをよく800字に詰め込んだなあと思いました。馴染みのある(?)世界観だから出来た荒技でもありますね。
取捨選択が難しいですよね。壮大なストーリーから、何を取って、何を捨てるか。
あらすじをなぞる必要は無いので、描写を主人公の感情に絞ったらもっと削れるものがあるかな? という気は少ししました。

> 妖精は、死なない。
> 人は亡くなる。朽ち果てる。
ここだけ句読点があるのが気になってしまいました(←細かい)

> けれど それは同時に私にとって 身体 心 が軽くなる この男
> そしてこの仲間と同じ方を向いて闘う日々だった
ここで、ちょっとつっかえてしまいました。他はすらっと読めるので勿体ない気がします。

_ おっちー ― 2008年09月25日 00時25分20秒

みなさん、コメントありがとうございます。

▼マロさんへ

 やはり、ピーターパンのティンカーベルなんかのイメージが強いのでしょうね。>いたずら好き

 リリィが人間臭くなったのは、カルロスのおかげなんです。
 それまで、なんの色味もないモノクロの世界で――リリィにとって、森での生活に色味はなかったらしい――毎日を送ってきたリリィが、カルロスと出逢ったおかげで、光を初めて浴びたのです。それは、キラキラいろんな色を反射する光です。
 出逢った後では、カルロスが、リリィにとっては全てだったんですね。
 だから、カルロスが死んでしまった世界では、リリィには光も見えず、真っ暗闇の世界で生きることになってしまったのでした。


▼ぎんなんさんへ

>馴染みのある

 ゲームの力ですね。

>削れる

 たぶん僕がリリィの周りの人物達の様子も描きたかったのは、これが前作「カルロス」の続編だからだと思います。

http://bunshoujuku.asablo.jp/blog/2008/07/17/3633049

 よかったら読んでみてください。

>句読点

 当然これは狙ったものであります。
 この方が、リリィの絶望感を際立たせられないかと思って採用した演出なんですが、あまり効果はなかったでしょうか。だとしたら悲しい…しくしく。

>つっかえて

 僕も書くとき、ここでは悩みました。
 わざとつっかえるように書いて、注目を引きたいというか。なぜかこの書き方にこだわりたかったというか。
 あまりうまく言えませんが、今回はこう書きたかったし、こう書いてしまったのでした。

_ BHW ― 2017年04月14日 01時05分53秒

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