#013-T003「親の都合」つとむューさん2007年01月29日 00時07分07秒

「親の都合で、子供を振り回すんじゃない!」
久しぶりにオヤジに怒鳴られた。
孫との団らんを、オレに邪魔されたのが不満らしい。

オヤジは毎朝、孫とのテレビを楽しみにしている。
畳にちょこんと座る姿は、後ろから見てもかわいいものだ。
それをオレが無理やり連れて行ったものだから、
オヤジは怒ったのだ。

でもこれは、子供のためでもある。
息子はもうすぐ小学一年生。
学校が遠いため、毎朝二キロもの道のりを歩かなくてはならない。
だから、今のうちに息子を鍛えねばならぬ。
毎朝のんびりとテレビが見られる時は、もう終わったのだ。

息子は、未熟児寸前で生まれた。
五歳になっても体の線は細く、保育園の送迎も車に乗せている。
そんな息子が、いきなりランドセルを背負って小学校に通えるのか、
心配でたまらない。

そこで思いついたのが、保育園への徒歩通学。
距離も、小学校の半分くらいでちょうどよい。
体力の増強に一役買うことはもちろん、
歩きながら交通ルールを教えることもできる。
道端の自然に季節の移り変わりを探せば、
親子の語らいもはずむだろう。
ほほを刺す木枯らしが、だんだんとやわらかな風に変わり、
つくしが生えてタンポポが咲いたら、もう一年生だ。

そうだ、これは子供のためなのだ。
オヤジに堂々と反論しよう。
オレのウォーキングダイエットや、
自転車通学する女子高生達との遭遇ってのもあるけど、
圧倒的に、子供へのメリットの方が大きいのだ。
勝手にすれば、と、妻も応援してくれている。

「オヤジ! オレからも言わせてもらうぞ。
 あんただって、親の都合で子供を振り回してただろうが。
 だからオレは、こんな親になったんだよ!」

あれれ?こんな事を言うつもりじゃなかったのに・・・
オレの完璧な論理は、どこへ行ったんだ?

「ふふっ、同じ様にあんたもお父さんに連れて行ってもらってたのよ」
二人の喧嘩を笑う、オフクロの声が聞こえてきた。
(文字数:774)

コメント

_ トゥーサ・ヴァッキーノ ― 2007年01月29日 10時45分32秒

親のようにはなるまい、なるまいと思っていても、ハタから見たら親と一緒。言ってることは違っても、結局中身はおんなじ…
そういうところをうまく切り取ってるなぁと思いました。

_ mukamuka72002 ― 2007年01月29日 16時02分20秒

 「お爺ちゃん、孫とテレビ観るの楽しみしているんだから、アンタが少し早
起きしてテレビの前に歩けばいいだろう!」って、普通にアドバイスしてしま
いそうになるぐらい自然体な話ですね。
〉オレのウォーキングダイエット/女子高生達との遭遇ってのもあるけど、
 このセコさもいい、一番好きなところは、
〉勝手にすれば、と、妻も応援してくれている。
 これだけの文章で、夫婦の力関係もハッキリ読み取れるので上手い。
まさに課題にピッタリ! 家族ってこんなもんだ。
ヴァッキーノさんの意見に賛成、本当に上手く切り取っている。

_ おさか ― 2007年01月29日 19時13分52秒

お、面白い。家族の力関係がまんま見える。
最後の一言をかましたおばあちゃまがヒエラルキーの一番上だな。「オレ」は・・・下から二番目か?(笑)
軽妙でとっつきやすい、それでいて鋭いところをぐっとつかむ、つとむューさんならではの「春」でありました♪ほのぼの

_ 無実のつとむュー ― 2007年01月29日 19時38分37秒

百吉さんの作品の件で、鞭打ち刑に処せられているつとむューです。
無実の罪であるとコメントを寄せていただいた方々へ、刑務所から御礼申し上げます。

トゥーサ・ヴァッキーノさん
親に似ているところを自分の中に見つけるたび、”オレにもこの血が流れとるんかい!”と嘆いていたら、最近娘に、”パパがもっとしっかりしてたらなあ・・・”と、ぼやかれるようになりました。

mukamuka72002さん
息子には、セコイ親を反面教師として、立派に育ってもらいたいものです。えっ、この話の通りになれば、息子もセコイ親になるって?うーん、どうしよう・・・

おさかさん
えと、「オレ」は下から二番目ですか・・・(ってことは、オヤジよりも上?えっ、庭の犬より上ってこと?)。本当は、「オレ」は上から二番目なんですよ、はっ、はっ、はっ、はっ!(妻にはかなわん)

_ くれび ― 2007年01月30日 01時16分39秒

家族の生死とともにその業も輪廻していくんでしょうか。
でもそれが家族というものなんでしょうね。

_ なぎさひふみ ― 2007年01月30日 19時24分38秒

 リアルさが真っ当な的に中心へと突き刺さってきます。その息遣いは心の正直な感じ方がないと伝わらないものです。
 家族というものは不思議です。もろに自分の鏡になって、美しいことやそうでないこと、そして隠しておきたいこともすべて自分自身の投影になって、現してくれている。
 そして、あがきは、すべて偉大なる母の愛に包まれていくのでしょう。

_ コマンタ ― 2007年02月01日 00時47分08秒

ぼくは今回散策コースを選びましたが、登山コースにもし「親の都合」が前もってお手本として提示されていたら、登山コースにしたかもしれません。イメージ化のヒントを得られた、というのがひとつ、この作品と張り合いたい、というのがもうひとつ。厚みのつけかたにはジェラシーを感じました。

_ 角田 伸子 ― 2007年02月01日 12時11分28秒

核家族の今、すばらしい家族が描かれていますね。
「親の都合」の題名もとてもいいです。

_ ぎんなん ― 2007年02月01日 21時46分42秒

前半ゆっくりと息子の説明をしておいて、後半畳み掛けるように展開するのがたまらない。しかも、それぞれの立ち位置がくっきりと見える。うーん、まいった。巧いです。

> オレのウォーキングダイエットや、
> 自転車通学する女子高生達との遭遇ってのもあるけど、
> 圧倒的に、子供へのメリットの方が大きいのだ。
> 勝手にすれば、と、妻も応援してくれている。

この4行が絶妙な気がします。

_ つとむュー ― 2007年02月01日 21時50分06秒

皆さんコメントありがとうございます(出張先からコメントします)。

くれびさま
この親あって、この子あり。こうしてずっと輪廻していくのだと考えると、自分がこの世に生きた価値が見えてくるような気がします。もし自分が死に面した時には、そのように考えたいと思っています。あくまでも理想ですが。

なぎさひふみさま
リアルさを感じていただきありがとうございます。まあ、ほぼ実話ですので、等身大の印象を持っていただければ、これほどうれしいことはありません。

コマンタさま
ジェラシーを感じていただき光栄です。今回散策コースを選ばれたとのことですが、”コマンタ”という名前が見当たらないのはなぜでしょう。もしかして、別ネームで投稿しているとか・・・?

角田伸子さま
苦労して二世帯住宅を建てた甲斐がありました。まあ、かみさんも働いているので、ジジババに子供達を見てもらわないと、とてもやっていけないのが実状です。作品内に子供の意見が全く述べられていないというのも、これまた”親の都合”なんです。

_ つとむュー ― 2007年02月01日 23時35分11秒

ぎんなんさんのコメントと、入れ違いになっちゃいましたね。

この4行、微妙ですか。でも、本音はこの4行の中に・・・(うぐっ、誰だ?何、幽体離脱した自分?)。失礼しました、やっぱり微妙ですよね。そう、子供へのメリットが一番、一番。うはははは・・・

コマンタさんの別ペンネーム、今まで知りませんでした。申し訳ありません(おさかさんのブログを見て納得)。実は12回の文章塾も、知らずにコメントしてました。乗り遅れているなあ・・・

_ ぎんなん ― 2007年02月01日 23時40分40秒

微妙じゃなくて絶妙と書いたの。全力で褒めてるのに……(しくしく)

_ つとむュー ― 2007年02月01日 23時51分42秒

ああ、ホントだ。なんと、”絶妙”を”微妙”と読み間違えてしまった!!
ぎんなんさん、ごめんなさい、ごめんなさい!(また鞭打ちの刑かっ!?ぐぇっ)

_ マロ ― 2007年02月02日 01時11分52秒

いいですね。
父親→自分→息子と3世代に及ぶ教育方針の輪廻が。それを包み込むように見守る母親像というのが最後に出てきて、さらに深みが増しました。

文章も読みやすくて、すっきりしている。ひとつ、ステップアップされたのではないでしょうか。よかった。

_ 木の目 ― 2007年02月04日 11時21分57秒

非常にお題にかなっている作品だと思いました。
> 圧倒的に、子供へのメリットの方が大きいのだ。
> 勝手にすれば、と、妻も応援してくれている。
この部分は、この家族のかたちを良く表していると思います。
あえて気になった点を挙げると、最後の母親の言葉が説明的だったところです。

子どもは忘れてしまったつもりでも、親のしつけは身にしみているんですね。

_ ひろゆき ― 2007年02月04日 16時21分03秒

いい内容で、わかりやすい文章だと思います。私も、今回の課題では、つとむューさんのような文章を書きたかったのですが、つとむューさんのように、うまくまとめることができませんでした。子が親の真似をしているのを、母が気が付いて見ているというのは面白かったです。

_ でんち ― 2007年02月04日 18時41分58秒

親の愛と親への愛を感じる作品で、はじめ、親の都合ってのが分からなかったのですが、まぁ、親の都合で愛が育まれるんだなと思いました。

_ つとむュー ― 2007年02月04日 21時33分00秒

皆さん、コメントありがとうございます。

マロさま
実は最初、最後の2行の無い作品を考えていたんです。話のオチのところで終わらせようと思って。でも、それでは規定の760文字に達しないので、考え抜いてオフクロの台詞を追加しました。深みが増したというコメント、うれしく思います。

塾長
上記のように、オフクロの台詞は後で追加したものなので、他の部分に比べて推敲が足りなかったかもしれません。お題にかなったとのコメント、うれしいです。実は、「春になった時のことを思っているが、舞台は冬なんじゃないか」と突っ込まれるのが恐かったのです・・・

ひろゆきさま
オフクロの台詞、好評でうれしいです。追加した甲斐がありました。”母親”というものは、その存在だけですべてを包み込むようなやさしさがありますね。自分で書いてみて、いろいろと勉強になりました。

でんちさま
”親に施してもらうのが嫌い”と、ずっと強がっていましたが、自分が親になった時、親から受けたのと同じようなことを子供に施している自分を見つけ、ジレンマに陥ることがあります。そんな時、これは本当は自分のためで子供のためではないんだ、と自分に言い聞かせている、ひねくれ者です。

_ ukihaji-12 ― 2007年02月05日 09時11分46秒

誰でも相手はよく見えるが、自分を客観的に見ることが出来ない。 然るに第3者には、一目瞭然と言う事でしょうか。 言い換えると、“人の振り見て我が振り直せ” の格言を思い出させます。 家庭での中のやりとりが微笑ましくて、いい作品だと思います。

_ 蝶子 ― 2007年02月05日 13時29分54秒

まったく、おじいちゃんだって孫とテレビ楽しむのも、自分の都合ですよねえ。子どもに体力つけさせるために俺は父親の役割果たしてるぞってポーズ取りたがる父さんも、自分の都合ですよねえ。しょうがないです、子どもは自己主張できないうちは親の都合に振り回される。でも今に、子どもに振り回されるんですよ、親は。ええ、ええ、ほんとに。

発育が不十分で体重が一定の値に満たない新生児のことをいう「未熟児」を、「寸前」と形容するのは文章として無理があります。おっしゃりたいことはわかりますけどね、もちろん。だから会話文として書かれていたら突っ込まないとこなんですケド。

_ クマザラス ― 2007年02月06日 06時39分29秒

子供と歩くのはとってもいいことですよね。私は、休日に無理矢理ウォーキングにつきあわせています。でも、休日だと女子高生に会わないのが残念だなあ。。。
ところどころ、ニヤリとさせていただきました。

_ 馥 ― 2007年02月07日 15時17分20秒

毎朝学校まで二キロもの道のりと聞いて、思い出しました。
私の学校も二キロは有りました、それに山の中腹にあったから登り坂でした。それでも大きなランドセル背負ってまるで一人前になった気分で出かけたものです。両親は、はらはらして居たかも分かりませんが。
後で聞いた話ですが、祖母が後ろからそぉ~っと見ていた事が有ったらしいですが大丈夫だったようです。
息子さんも、大丈夫ですよ、心配いりませんよ。
その二キロの間で、学校のお勉強以外で色んな学習をして帰って来ますよ。それもまた良い物です。
お入学おめでとうございます。

_ いづみ ― 2007年02月08日 11時04分11秒

あっはっは。
あんただって…の力み方がオモシロイ!
親が子を思う気持ち。
それが引き継がれていく。
ほのぼのとあたたかい姿が、日常の中にくっきりと浮かび上がってきます。
オチがすごくいいです。リアルでいて、それでいて、笑える。
つとむューさんの作品に笑いのスパイスをふりかけると、何杯でもおかわりできそうなおいしさです、ハイ。

_ つとむュー ― 2007年02月08日 21時15分18秒

出張から帰ってきました。皆さん、コメントありがとうございます。

ukihaji-12さま
自分の親は自分の反面教師、そして子供は自分を反面教師にして育っているようです。娘がいつもぼやいています。「私、なんでこんなに、おっちょこちょいなんだろう・・・」と。――親子だから。簡潔でいて、それでちょっとあきらめを含んだ言葉、ですね。

蝶子さま
「未熟児寸前」が、口語だったとは・・・。自分では、絶対気づかない点ですね。ご指摘ありがとうございます。怪しい言葉は会話にするというテクニックも、今度やってみたいと思います。

クマザラスさま
ニヤリ、としていただきありがとうございます。だんだんと作品がエロオヤジ化しそうで、ちょっと心配しています。どうせなら、一気にエロオヤジ化しようと、新作を考えています。

馥さま
実は4月から、登校する息子の後をついていこうと考えています。2キロの長い道のりも心配ですが、交通量の多い歩道の無い道を歩くので、それも心配です。せめて歩道があるところまでは、見守ろうと思います。

いづみさま
笑っていただきありがとうございます。やはり、自分の親の前では素直になれませんね。なぜか知らないけど、ぎゃふんと言わせたい気持ちが働きます。そんな素直になれない様子が伝わるとうれしいです。

_ 百吉 ― 2007年02月09日 09時42分30秒

自然な家族の姿が好印象です。
もしかして「オレ」が小さいとき反抗したのかしら。
きっと「オヤジ」は気にしてたんでしょう。
素直に気持ちが表せない男たちに対して、「オフクロ」と「妻」の反応がおもしろいです。

_ 露山露 ― 2007年02月10日 09時52分22秒

なぜかつとむューさんに対してなにかいおうとすると、
ついというか無意識にというか「コマンタ」と本名を明かしてしまいます。
それでいつだったかも仮面舞踏会でいづみさんの大賞もののコメントを招き寄せたのでした。
それにしても面白かったのは、預言者さまのところへお書きになったコメントです。
そして、それに対する預言者さまの返信。
ぼくは笑いのさざ波にからだをひたしながら、「渚のアデリーヌ」を聴きました。

_ SOID ― 2007年02月10日 23時40分38秒

素敵なお話ですね。
子供が居るというのはきっと幸せなことなのだろうなあ、といつも思います。親を憎もうが憎まなかろうが、結局親と同じ道を歩くことが多いのが世の常のようです。かくいう私もそういう道を辿っていることに気づいて、愕然としたり、諦念したり、というところです。

_ つとむュー ― 2007年02月11日 22時18分53秒

家族旅行から帰ってきました。
皆さんコメントありがとうございます。

百吉さま
>もしかして「オレ」が小さいとき反抗したのかしら
そういった見方には、全く気づきませんでした(いつも反抗してましたし)。
今度、このことを意識して、オヤジの行動を観察してみようと思います。

露山露さま
あの時のいづみさんのコメントは最高でしたね。おそらく一生忘れないでしょう。ちなみに、コメント元の作品はこちら↓。
http://bunshoujuku.asablo.jp/blog/2006/07/16/447040

SOIDさま
やはり、親と同じ道を歩くことが世の常でしょうかね。親として子供に、どんな背中を見せることができるのか、その時にどんな想いであったのか、という自分なりのテーマを持って、文章塾に臨んでいます。

_ 鹿王院知子 ― 2007年02月25日 10時53分18秒

つとむューさんの作品を見ていると
いつも私のものと対極にあるような気がするのです
今回の作品も温かくきちんとそれぞれの立場を
あらわしていて
輪廻がテーマの詩のように感じました
さわやかで温かく心地よい感じです
コメント、遅くなりましてごめんなさい

_ つとむュー ― 2007年03月04日 07時50分05秒

ろくこさま、コメントありがとうございます。
体験したことないものは書けない性分なので・・・(笑)
文章塾を続けているうちに、未体験の出来事も、見てきたように書けるようになりたいと思います。

_ terrikrein.wordpress.com ― 2017年08月12日 00時09分55秒

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