#005-0001 「無線犬の恩返し」つとむュー さん2006年01月30日 11時49分03秒

雪の夜に、あの人はボクにミルクをくれた。
駅からは、こんなに沢山の人達が出てくるのに、
暖かいミルクをくれたのは、あの人だけだった。

なんとか恩返しをしたい。
あの人の家の前で、そんなもどかしい気持ちに支配される。
すると突然、電気のような思念が体を貫いた。
「カベヲ、ナオシタイ・・・」
これは何だ!?
人間界には無線LANというものがあるらしいが、これがそうなのか・・・
どうやらあの人は、電波に想い乗せて飛ばしているらしい。
次から次へとあの人の想いが降ってくる。

これは恩返しのチャンスだ。
家族に打ち明けらないあの人の想いを知っているのは、ボクだけだ。
そこでボクは、人間に化けることにした。

まず、家を改修してあげようと、大工に化けてみた。
すると、「リフォーム詐欺だな!」と追い返された。
次に、洗濯物をたたんであげようと、今時の家政婦に化けてみた。
すると、「メイドさんを呼んだのは誰なのーっ!」と
夫婦喧嘩になってしまった。

本物のダイヤの指輪を届けようとすると、
「もともと本物なんだよ!」と怒られた。
おでんの屋台を引いていくと、
「だいこんなんて大っ嫌い!」と息子に蹴られた。

いったいどうすれば、あの人は喜んでくれるのだろう。
途方に暮れていると、家族の人達に見つかってしまった。
「まあ、かわいいワンちゃん!」
「ねえパパ、この犬飼ってもいい?」
そして、あの人がやってきた。
「お前はあの時の子犬か。いいだろう、家に置いてやろう」

こうしてボクは、あの人の家にお世話になっている。
素のままでいることが恩返しになるとは、予想もしなかった。
何をやっても全くダメだったのが嘘のようだ。
今日もあの人は、電波に想いを乗せている。
「ユキノヨルニ・・・」
あの人も、あの日のことを思い出しているのだろうか。

コメント

_ mukamuka72002 ― 2006年01月30日 13時35分32秒

子供に読み聞かせても楽しんでもらえる内容ですね。犬がいろんな者に化けてみるが、何度も追い返される山場で目を輝かせる子供達の顔が見えるようです。教訓的な落ちも良し。子供向けをねらった訳ではないと思いますが、大人も子供も楽しめる「お話」はかなり難しいものです。つとむューさんの人柄が行間からにじんでいる作品だと思いました。

_ たまどん ― 2006年01月30日 19時21分11秒

犬の恩返しが物品やサービスではなく、愛玩される事。貧欲さが溢れる時代に「大切なものは何か」という提言を与える世界です。お金や地位や名誉はあれば便利なものですが、それが目的となると人は貧欲さが目立ち卑しさが際だつようになります。何やらどこかの事件の当事者に伝えたいようなお話ではあります。

_ おさか ― 2006年01月30日 20時03分13秒

わははは!今までのつとむユーさんの投稿作品勢ぞろい♪ですよね。
リズム感もあってとても楽しく読めました。
無線LANの「お喋り」もナイスです。

_ 百吉 ― 2006年01月30日 21時33分15秒

無線LANで電脳世界へダイブできるワンコって、すごい。
自作パロディあり、時事問題あり、教訓あり、最後にホロリとさせる、お楽しみ作品でした。

_ つとむュー ― 2006年01月30日 23時37分24秒

mukamuka72002さん、たまどんさん、おさかさん、百吉さん、コメントありがとうございます。
みなさんもコメントされているように、今回はホームページ開設記念作品です。肩に全く力が入っていないので、気楽に読めると思います。コメントも、お気楽にどうぞよろしくお願いいたします。

_ マロ ― 2006年01月30日 23時50分33秒

あれもだめ、これもだめとドタバタがいくつか続いて、最後にストンと落とす。絵本にしたいようなお話ですね。面白かったです。

_ つとむュー ― 2006年01月30日 23時57分39秒

そうそう、今回、ついに1番目になりました。最初は、やったー!と思いましたが、リストの一番上にあるのを見ていると、それだけでなんだかドキドキしてきます。次からは5番目くらいでいいかな・・・なんて、すっかり小心者になってしまいました。
ホームページは、上の「つとむュー」をクリックするとリンクされています。無線犬の「ボク」は、何でこんなものに化けたのだろう、と思われた方はご覧下さい。

_ でんち ― 2006年01月31日 00時22分40秒

さすがは犬。忠実ですね。失敗しているのがまた、かわいいです。無線LANを感じ取るところで、かなり賢そうな犬顔を思い浮かべたのですが、どんどんくずれていくのが楽しかったです。だから素のままで恩返しできるんでしょうね。
リストの1番上ってドキドキするものなのですね。ふさわしい作品じゃないですか。

_ Spirytus ― 2006年01月31日 00時24分19秒

天気の良い日はかまってあげても、凍える夜は自分のことしか考えない、世知
辛い世の中と思います。暖かいミルクが、小さな生命に、この世にある優しさ
を与えたと思います。

_ こば ― 2006年01月31日 01時50分45秒

 しんみりした雪景色から、一転して軽快な速度で語られる犬のコミカルな失敗の数々、たまりません。壁、洗濯物、ダイヤの指輪(元から本物なんですね)、だいこん……。ぷぷぷ。
 笑えて、しかも少し切ない失敗の様子、素敵だなぁ。
 そのままの姿を受け入れてもらっているのも、しみじみいいなぁと。リズム感が素晴らしい、と思いました。

_ 赤い繭 ― 2006年01月31日 11時11分49秒

いいお話有難うと言いたい。
自分の家族に置き換えてみました。父は家族のために働いている。家族は何か御礼(恩返し)したい。たとえば特に子供は良い成績を取ればお父さんは喜ぶ。でもその通りにはいかない。色々なことをやっても中々喜んでもらえない。でも父は健康で明るい子供たちがいればそれでいいと思っている。いつか子供が結婚して子供を持ったときそのことに気が付く。
読後に思い描いたことです。人にその文章から様々なことを考えさせる、思い描かせる作品は最高だと思っています。

_ いづみ ― 2006年01月31日 15時27分45秒

あっはっは。つとむューさんの過去作品総ざらいですね。
素のままが恩返し、って、すごくじんわりきました。
クリアな文体にあったかハート。
そしてボクは書斎の奥でルーペを見つけ…ないかな?

_ 明衛門 ― 2006年01月31日 18時56分53秒

雪の夜、あの人が犬にミルクをあげたくなった出来事って
なんなんでしょうね。
許されぬ恋かなぁ、それとも仕事の悩み、、?

セルフパロディの面白さとともに、なんとも余韻のある素敵な
幕切れで素敵でした。
面白さ倍増でした!!ダイヤ、本物なのですね(笑)

_ 木の目 ― 2006年01月31日 22時27分28秒

テンポがいい。
読んでる人を想定して描いているのに、見事です。
この犬は、つとむューさんの化身?
おもしろかった。

_ 鹿王院知子 ― 2006年02月01日 21時57分00秒

わんちゃんって
人間のことを本当に考えてくれていそうですよね

わんちゃんネタって
それだけで
心熱くなってしまうのは
私だけでしょうか

ダイヤは本物だったことがわかりました
あちらの話のその後も気になってきました

つとむューさまの
独特の世界に
今回も引き込まれました

_ 鉛筆カミカミ ― 2006年02月04日 23時13分14秒

面白かったです。
でもやっぱり800文字の制限で小説って、
難しいですよね。
つとむューさんの、縛りのない、自由な表現で書かれた、
作品を読んでみたくなりました。

時間がある時に、HPのぞきたいと思います。
よろしく。
では。

_ つとむュー ― 2006年02月05日 16時27分16秒

マロさん、でんちさん、Spirytusさん、こばさん、赤い繭さん、いづみさん、明衛門さん、木の目さん、鹿王院知子さん、鉛筆カミカミさん、コメントありがとうございます。
実はですね、犬、ほしいんですよ。しかも、密かに悩みを聞いてくれるような犬が・・・。小説といえども、普段考えていることが文章に出てしまっているような気がします。他の人の作品を読んでいる時も、この人は普段こんなことを考えているんじゃないだろうか、と、作品の背景を想像してしまいます。おもしろいですね。
今週はあまり時間が取れなくて、まだ全作品を読めていません。コメントもらってばかりで申し訳ないです。早く読んで、コメントしなくっちゃ!

_ anonymous ― 2006年02月06日 17時35分52秒

_ めきし粉 ― 2006年02月06日 21時00分32秒

犬が化けるというのが面白い。

ふと、どこか別のところを見ている犬やら猫は
ひょっとしたら流れる電波をめで追っているのかなぁ
とか色々な思いを膨らませてくれる作品だとも思いました。

_ ラジオ少年 ― 2006年02月07日 00時13分43秒

読んで楽しかったです。
殺伐とした世相が明るくなります。

_ よっぱ ― 2006年02月09日 21時27分17秒

在るがままの姿が結局一番だったという教訓も入りつつ嫌な感じが全くしない。絵本にしたいようないいお話ですね

_ KEN ― 2006年02月11日 01時00分48秒

わんちゃんは、主人の気持ちをかなえてあげることができなくても、幸せになるのでは。でも気持ちをしっているだけ歯がゆいかも(笑)

_ ぎんなん ― 2006年02月11日 02時49分52秒

今までの作品が全て入った(って事は、無線犬は今までのつとむューさんの文章を全て無線で受信してるんですねぇ)文章に大笑いしつつ、「存在自体が恩返し」という結末にほろっとします。そうでなくても私は犬関連の話には理性を無くすというのに。ああああわんこ可愛いぃ(以下略)

_ ひまわりまるこ ― 2006年02月11日 23時04分29秒

爽やかで好感のもてるお話と文章でした。
偶然でしょうが、小説現代の今月号のショートショートのトップに恩返しの話がありました。 スズメの恩返しが人ではなく飼い犬の方に、、、もしまだ読んでいなかったら、発想の比較も面白いかと思います。

_ つとむュー ― 2006年02月12日 15時36分21秒

めきし粉さん、ラジオ少年さん、よっぱさん、KENさん、ぎんなんさん、ひまわりまるこさん、コメントありがとうございます。
まあ、これは小説なので、実際には「無線犬」は存在しないのですが、その代わりに無線LANで発信したあの人の想いを読んでくれる方々がいます。それだけでも、あの人は癒されているのだと思います。そういう意味では、ここに書かれている皆様のコメントは、恩返しそのものと言えるでしょう(うわぁ、すごい歯の浮くことを書いてるよ。昼間っから・・・でも、皆様には感謝しております)
「小説現代」なんて月刊誌があるなんて知りませんでした。ちょうどオリンピックの番組表がほしかったので、ついでに買ってきたいと思います。

_ いづみ ― 2006年02月12日 21時38分26秒

【1票】
いれさせていただきます!毎回つとむューさんの文章は明快で読みやすくて好感度が高かったのですが、総集編ということで、ぜひ今回こそ。
インターネットでのあたらしいつながり、人と人ともそうですが、人と犬も!?と、愉快な作品でした。

_ つとむュー ― 2006年02月13日 09時16分02秒

いづみさん、投票ありがとうございます。ホームページにも書き込みありがとうございます。初めて票をいただいて感激です!でも、今回はホームページ開設との総合点だと(自分では)思っていますので、そのうちプンプンと独特な匂いのするような作品を作って、賛否両論のコメントと、賛同者の方からの投票をいただけるようになりたいと思います。
投稿作品を改めて見てみると、「ああ、いいな」と思う作品や投票されている作品は、どこか尖っていて、光るものがあるような気がします。今回、自分の今までの作品を振り返る機会を得ましたが、どれもこれもどこか無難にまとめようとしているところがあって、それじゃいけないんだと思いました。
第6回用の作品は、もう作っちゃってあるので、それを投稿します(そろそろ投稿時間ですね)。第7回からは、作品にいろいろと匂いをつけていけたらと思います。まあ、気負わず、気長にやっていきますので、今後もよろしくお願いいたします。

_ manicure ― 2017年05月04日 11時59分36秒

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