ご挨拶2009年06月15日 19時45分58秒

皆様、長い間ありがとうございます。

いつかどこかで再びお会いできますように。

文章塾スタッフ一同

*木の目はしばらくのあいだ、文章塾のゆりかご
http://mayu-kids.asablo.jp/blog/
にて活動しています。

第35回お気に入り結果、作者発表!2009年06月15日 19時45分33秒

お気に入り登録結果は

こちら!

#035-0020「葡萄」2009年06月01日 18時40分45秒

 庭の一本の葡萄の木に、小さな花房がたくさんついている。
 洗濯物を干している女房殿に、「今年の秋は、葡萄は豊作だよ。百房以上は間違いないな」と声をかけると、「たいして手入れもしないのに不思議ね」と笑っている。私は、園芸本と首っ引きで、樹勢を弱めぬように枝を切ったり施肥したりしたんだけどさ、などとぶつぶつとつぶやきながら、猫の額ほどの庭をうろうろする。向かいの家の屋根の上から見事な黒い羽根のからすがあきれたように眺め、それから一声啼くと、五月の青い空へ一気に羽ばたいていった。空になった洗濯籠をおいて女房殿は雑草を抜きながら、苺もずいぶんなっているよ、それに去年植えた苺から伸びた子株が、ミントの間にしっかりと根を下ろしているわと、楽しそうに話している。
 こんなに晴れているのに午後からは雨になるらしい。
「ええ、この前買ってきた苺用の土、どなたかいりませんかぁ。特にそこの読書をしようとして本を片手に持っている男性の方ぁ」と女房殿が笑いながら私に声をかけてきた。
「明日晴れたら、苺をポットに移植するよ。今年はブルーベリー、どうかな」ベランダの上り口のコンクリートに座っていた私は、頭を掻きながら本の栞をちょっとだけ引っ張り出して眺めた。へるんの栞と書いてある。小泉八雲記念館のものだ。女房殿は裏手のブルーベリーを見に行ったらしい。私は何事もなかったように栞を 挟んでいた場所を再び開いて、「城中の霜」の世界へ旅立つ。
 橋本左内が流した泪は香苗に届いたのだ。
「……昨夜、城中、霜始メテ隕ツ。……」噎びあげながら吟じた香苗に、思いを馳せながら目を潤ませていると、菖蒲の白い花を手にした女房殿が不思議そうな顔をして、私の横から本を覗き込んでいる。
「山本周五郎だよ」私は照れて本を閉じそっぽを向くように、女房殿とは反対の空を見上げて雨雲を探した。

まだ降らないわよ、とにっこり笑った女房殿から、陽の光の匂いが漂ってくる。
(文字数:799)
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#035-0019「別れ~旅立ち~結び目」2009年06月01日 18時40分28秒

 私の名前は優、女の子、19才。あとちょっとで誕生日を迎えちゃうけど、それまでは女の子。
 趣味はドラム。表向きはねっ。でも夜は違うのよ。今日も愛用のデザートイーグルのお手入れ、うふっ。これって結構、威力あるのよね。今夜は10代最後の狩りにでも行こうかしら。

「ゆ、優…?」
 その青年は、驚いた顔でこちらを見た。
「あら、タクじゃない、久しぶり」
「お、お前、生きていたのか…」

夜の暗黒街で、私はタクに出会った。
タクはまだ駆け出しのチンピラみたいだった。
「・・・・・・タク」
そう言うが早いか、タクが私に向かってピストルを構え、引き金を引いた。
火薬のにおいとともに、私の胸に焼けるような鈍い感覚がジワリと広がった。

「タクの弾丸が私の左の乳首に命中しちゃった・・・・・・ウフフ」
私は、タクの股間めがけてデザートイーグルをぶっ放した。

 時間は空間を射抜き、愛の事象が破壊という創造に明け渡した意思は、一瞬の矢を宇宙の炎に変えた。躁鬱する光は弾丸の飛影の舞を見せ、応化になる命はその風のごとく夢を撒き散らすのだった。

 永劫に続くかに見えた一瞬の苦しみが、反転するかのように微笑を齎した。
 それは、祈りに似た命が、錯綜する夢に愛を認めつつあったのだった。

『コイーン!』

――はっ、跳ね返した!
 信じられない。タクは弾丸を受け付けなかった。
「女の子がそんなん振り回すのは、似合わな、い」
 カクン。
 タクの身体が腰から2つに綺麗に折れ曲がり、そのまま顔面から地面に突っ伏した。
「タク!」
 私はタクに駆け寄り、無様なタクの姿を写メすると、介抱した。
 心臓マッサージ、人工呼吸……思い付く全ての応急処置を施したが、タクの意識は戻らない。
 仕方ないので199に携帯で通報すると、Tシャツの裾を引き伸ばしてパタパタとタクの顔を扇いだ。

 確かにタクの弾丸に私は感じるものがあった。
 私の弾には何が……?

 私は呟く。
――生きていたらする事は?
「唯1つ!」
 今の声は……
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