「文章塾という踊り場♪」閉鎖のお知らせ2019年04月17日 16時34分26秒

誠に勝手ながら、当ブログ「文章塾という踊り場♪」および「実験室」は、

2019年6月30日

をもって閉鎖させていただきます。
閉鎖後、メッセージの参照はできなくなります。
過去ログ等必要な場合は、閉鎖するまでに保存などの対応をお願いいたします。

ご挨拶2009年06月15日 19時45分58秒

皆様、長い間ありがとうございます。

いつかどこかで再びお会いできますように。

文章塾スタッフ一同

*木の目はしばらくのあいだ、文章塾のゆりかご
http://mayu-kids.asablo.jp/blog/
にて活動しています。

第35回お気に入り結果、作者発表!2009年06月15日 19時45分33秒

お気に入り登録結果は

こちら!

#035-0020「葡萄」2009年06月01日 18時40分45秒

 庭の一本の葡萄の木に、小さな花房がたくさんついている。
 洗濯物を干している女房殿に、「今年の秋は、葡萄は豊作だよ。百房以上は間違いないな」と声をかけると、「たいして手入れもしないのに不思議ね」と笑っている。私は、園芸本と首っ引きで、樹勢を弱めぬように枝を切ったり施肥したりしたんだけどさ、などとぶつぶつとつぶやきながら、猫の額ほどの庭をうろうろする。向かいの家の屋根の上から見事な黒い羽根のからすがあきれたように眺め、それから一声啼くと、五月の青い空へ一気に羽ばたいていった。空になった洗濯籠をおいて女房殿は雑草を抜きながら、苺もずいぶんなっているよ、それに去年植えた苺から伸びた子株が、ミントの間にしっかりと根を下ろしているわと、楽しそうに話している。
 こんなに晴れているのに午後からは雨になるらしい。
「ええ、この前買ってきた苺用の土、どなたかいりませんかぁ。特にそこの読書をしようとして本を片手に持っている男性の方ぁ」と女房殿が笑いながら私に声をかけてきた。
「明日晴れたら、苺をポットに移植するよ。今年はブルーベリー、どうかな」ベランダの上り口のコンクリートに座っていた私は、頭を掻きながら本の栞をちょっとだけ引っ張り出して眺めた。へるんの栞と書いてある。小泉八雲記念館のものだ。女房殿は裏手のブルーベリーを見に行ったらしい。私は何事もなかったように栞を 挟んでいた場所を再び開いて、「城中の霜」の世界へ旅立つ。
 橋本左内が流した泪は香苗に届いたのだ。
「……昨夜、城中、霜始メテ隕ツ。……」噎びあげながら吟じた香苗に、思いを馳せながら目を潤ませていると、菖蒲の白い花を手にした女房殿が不思議そうな顔をして、私の横から本を覗き込んでいる。
「山本周五郎だよ」私は照れて本を閉じそっぽを向くように、女房殿とは反対の空を見上げて雨雲を探した。

まだ降らないわよ、とにっこり笑った女房殿から、陽の光の匂いが漂ってくる。
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